先ほどから10分おきに電話がかかってくる。5コールほどしたところでぷつり、と切れてはまた10分経った頃にピロリロと鳴り出す。
 
何回も同じ音を聞かされているとこちらも飽きてくるので、着信音色を変えてみることにした。自宅の電話機に入っている"チャクシンネイロ"はどれもこれも耳に障る音で、テンポがやたら速い。心地よい音とテンポでは電話がかかってきたときにうっかり聞き惚れて電話に出そびれるという副作用を考慮してのことなのか。
少し早すぎるシューベルトの野ばらに設定してわくわくして待っていたら今度は自分の携帯電話が鳴った。ぜんぶ父だった。何がしたいんだきみは。

 家事に没頭する。めったにしないことだからこそ細やかに、徹底的に。流しの周りやテーブルの上を磨き上げ、隅から隅まで掃除機をかける。邪魔なものがあれば横着せずに脇にどけてどんどん吸い込む。フローリングの部屋には掃除用クロスも使いピカピカに。
汚れを落としながら頭の中も真っ白にしていく。自分の中に区切りができたときの真っ白さといったら、空っぽなのに満たされているという心地よい矛盾で、あぁ掃除って気持ちいいものなんだね、と思う。
 
 でも完璧に仕上げようとするからこそ、めったにやる気が起きない。これは「主婦」として「お嫁さん」という職に就いたとき、「夫」とか「夫の母親」から首を言い渡されかねないのでは、と心配してみるけど当分「お嫁さん」になれる様子もないのでわたしのある意味幸せな心配事がひとつ消えたのでした。

パソコンに繋がれたねずみのご機嫌がすぐれない。いや、体調がすぐれないのだろうか。いくら机の上でなめらかに滑らせても、画面上のしるしはかくかくと不自然につまずいてばかり。こっちの機嫌まで下降気味ですよ。
 
なんていってみたけどマイナスなあの人とうまいこと会えそうで30秒ごとに顔が緩む。えへらえへら。そろそろ脳内で輪郭をたどるのも苦しくなってきた頃なので嬉しいお誘いです、感謝感謝。調子に乗ってお酒を飲み過ぎないように、って手のひらに書いておこう。

なんで好きじゃない人からのメールばっかり受信してるんだろう、このケイタイは。
  
洗濯機から取り出した下着をを窓辺にぶら下げて寝転がっていたら、もくもくしていた入道雲がいつの間にかひとつもなくなって、空には青しかなくなって、なんとなく自分の中にも開き直りの感情が湧き出したような。
 
ただし、後ろ向きな開き直り。
 
しかしマイナス×マイナスがプラスなら、わたしと、ちょっとマイナスのにおいがするあの人をかけたらプラスになれるんじゃないの。
でもこれがマイナス極とマイナス極だったら、と考えるとまた憂鬱。
永遠にくっつくことは ない。

日付に小鳥ちゃんを添えて

暑い空気とその空気中の水分とで外は不快指数ぶっちぎっているなか、ひんやりした室内で毛布にくるまり積読(いっぱつ変換ができるのなんで)のなかから一冊引っ張り出す休日。ついでに濃いめのあっついココアもいれてなんだか幸せ。
 
この幸せ感はきっと夕方頃には後悔に変わっているんだけど。
 
小学生の頃、日曜日だっていうのに一日ごろごろして過ごし、夜にちびまる子ちゃんがはじまる時間になると、後悔と気だるさと手をつけていない宿題への焦燥感が一気に押し寄せてくるあの感じ。
いまでも感じるよねー、よねー。

空にシールみたいにはりついた月が気持ち悪くて、でも目が離せないでよそ見歩きしていたら電柱に曖昧に衝突。小さい頃は自分の足元ばかり見て歩いていたから停められた車やバイクのサイドミラーに顔面で飛び込んでいくことが度々あったし、この間は先を急ぎすぎて自動ドアの存在に気づかず、あ と思った時には開ききっていないドアにぶつかっていた。

長かったものを短くふわふわにしてみたら、やっぱりイメージ通りにはいかないものなのね、と鏡の前でふにゃふにゃして、さらにそれをまっすぐに戻そうとしたら中途半端でうねうね子。もう自分で自分の髪の毛をなんとかしようとするのはやめようと心に誓う。(でも前髪はしょうがないよな。伸びる度に美容院、とかやってられるほど暇じゃない、とか言いつつただの面倒くさがり。)

終了間際の某美術館展に行ってきた。美術館というものに足を運ぶのは中学生ぶりで、内容をよく知りもしないくせに浮き足立っていた。
 
なにがあるの  知らない、あ、ローマ風呂?  ・・・  あ違うトルコ風呂  ・・・ぷ
 
ていう具合で、ちょっとは予習しておこう、と免許の方の勉強を放り出して、そこで展示される作品の一点だけ(一点かよ)作品紹介を読んでおいた。入ってすぐその絵に出くわし、あまりに現実離れした美しさにみとれようかというところを人の頭に邪魔される。人間多すぎる。仕方ないので少し下がったところからじー と眺めながらまわった。それでもかなりおなかいっぱい。入場1時間待ちなんてどうでもよくなるくらい濃い時間をすごせた。
 
もし某ねこ型ロボットくんがいて、時間旅行をさせてくれるならこれらの絵が描かれているまさにその時に連れて行って欲しいよね。